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27歳【女性弁護士】が独立開業!「顧問0」からの法律事務所運営エピソード

近年司法制度改革で弁護士の合格人数も増えており、新人の弁護士は就職先の事務所も見つかりにくい状態だと言われています。そのため司法修習後いきなり独立開業する「即独弁護士」も増えているそうです。

私は当時まだ旧司法試験時代でしたので今ほどの苦労はなかったのかもしれませんが、それでも独立した年齢が若かったことや女性であったことなどもあって、開業当初からいろいろと事務所を維持するための苦労は多かったと思います。

今回は、そんな私の弁護士事務所開業当時からの事務所経営のための奮闘記をご紹介します。弁護士という仕事に限らず、これから開業される方や開業されて経営に悩んでいる方などに少しでも参考にしていただけましたら幸いです。

弁護士開業にまつわる6つのエピソード

【1】27歳で弁護士として独立!しかも女性で開業、条件は不利?

私は弁護士ですが、約2年半の勤務弁護士時代を経て独立開業しました。

勤務弁護士時代の間に複数の弁護士事務所(法律事務所)で勤務しましたが、それぞれの事務所にはそれぞれの弁護士のカラーがあり、それぞれの弁護士が自分のカラーで自分なりの経営をしているのを目の当たりにすることとなりました。そこで「これなら私でも私のカラーの私らしい事務所を開業できるのではないか?」と考えたことが独立開業のきっかけでした。

勤務弁護士2年半での独立は当時としても早いほうでしたし、開業してやっていけるのか不安もありましたが、それよりも「やってみたい」という気持ちが強くそれほど恐れはありませんでした。

ただ私が独立したときの年齢は27歳でしたし、私は女性でした。当時(今もだと思いますが)弁護士の世界はまだまだ「年配の男性弁護士」の影響力が強かったです。そもそも弁護士の人数も男性が多いですし、弁護士会などで重要な役職についているのはやはりある程度の年齢の男性弁護士が多いです。

一般でも「弁護士」というと「年配の男性」というイメージが強く、私が出て行くと「女性か」「若いな」などと言われることもあり、大変やりにくい面はありました。このようなことで、私は開業はしたものの、条件としては比較的不利だったのではないかと思います。

女性弁護士の割合推移(データ引用:【日弁連】)

【2】顧問会社がなくても弁護士事務所を継続する方法を考えないと…

年齢や女性であったことなども理由としてあったのだと思いますが、私は開業当初から顧問会社が1社もありませんでした。通常の法律事務所は複数の顧問会社を持ち、顧問会社からの顧問料収入を基本的な収入源として事務所を維持しています。顧問料は定期的に入ってくるので、これがあると事務所経営が大変安定するのです。

私はこの顧問会社がなかったので、まさしく「明日は見えない」状態になりました。その日その月ごとに新しい相談者がやってきて依頼をしてくれるか?が事務所の維持にかかってしまいました。

私は顧問会社がない状態で、何とか事務所を維持経営していく工夫や方法を考えなければなりませんでした。

【3】事務所経費は最大限節約!

収入が少ないことを前提として事務所を維持しなければならなかったので、私は事務所の経費を最大限節約することにしました。事務用品はなるべく安いものを使い、交通費も公共交通機関を使い(タクシーは使いません)、遠方の裁判所でも宿泊はせずに日帰りにすること、無駄な電話は控えることなど、かなり徹底して経費節減しました。

開業当初から2年程度は事務員も入れず、事務用品の購入やコピー、封筒の宛名書きからお茶出しまですべて自分でしていました。電話に出たら事務員と間違われることも普通でしたし、お茶を運んでいくと法律相談に来られたお客様から事務員と間違われることも多かったです。

それでも仕事をきちんとしていたら、顧客は理解し信頼してくれたので、離れていくことはありませんでした。

【4】弁護士会の法律相談を利用する

事務所経営において集客は重要な問題です。開業当初の集客は、弁護士会や法テラスの法律相談から直接依頼を受けることが多かったです。弁護士は弁護士会や法テラス(昔は法律扶助協会)から法律相談が割り当てられますが、このような相談に行くとその場で事件の依頼を受けることがあります。

独立当初しばらくの間はこのような法律相談からの事件依頼にかなりお世話になりました。

【5】ホームページからは多大な恩恵を受ける

事務所の集客方法として私が一番恩恵を受けたのはホームページです。独立当初からホームページを作ってブログなども書くようにしました。ホームページ自体は業者さんに作成を依頼しましたが、中身(サイトコンテンツ)の文章はすべて自分で書きました。

私が女性なので、女性ならではの細やかな対応が出来ることなどを前面に押し出し、ホームページ全体の色合いやデザインもやわらかい印象に仕上げました。

若い女性だということは弁護士としてはハンディでしたが、ホームページではむしろこれを生かす作戦をとったのです。

おそらくこれが成功したのだと思いますが、次第にホームページからの集客が主になってきました。男女問わず離婚や男女問題などの相談が多く、たくさんのご夫婦やカップル、子供達とも出会いました。

親権者争いの事案などでは本当に心痛めることも多かったですが、何とか解決して依頼者の方やご家族が前に進んでいけるようになったり、最初相談に来られたときには絶望的な表情で沈み込んでほとんど目も合わせてくれなかった方が、解決時には少し笑顔を見せて下さったときなどには、私も心からうれしかったです。

依頼者の方々も、このような私の姿勢を評価してくださったのか、数年経って再度別の依頼をして来られたり、周囲の人を紹介してくださるようにもなってきました。

ホームページをお願いしていた担当者もとても良い方で、SEO対策などでもお世話になりました。私の事務所はホームページがあったから維持できたといっても過言ではなく、ホームページや制作会社の担当者には心から感謝しています。これから開業する方は、是非ともホームページを作ることをおすすめします。

【6】最後まで顧問が無くてもがんばれたのは顧客のおかげ

私の事務所は約10年継続し、結局最後まで顧問会社はありませんでした。それでも事務所を維持してがんばってこれたのは顧客の支えのお陰であったと思います。私が辞めるときも一緒に泣いてくれた依頼者や、「何年たってもいいからまた弁護士に戻ってきて欲しい」と言ってくださった方などもいて、本当に心が温まりました。

このような体験は、勤務弁護士では決して味わえなかったことだと思います。

弁護士の顧客はその弁護士のカラーに合った人が来るものです。私の事務所には私を気に入ってくれる人だけが頼みに来てくださいました。

たくさんの人たちの支えによって成り立っていた私の事務所の思い出は、これからも私の一生の財産になるでしょう。

まとめ

士業の皆様へ。どのような士業であっても独立は大変ですが、独立しないと味わえない楽しさや醍醐味がたくさんあります。苦労を恐れることなく、飛び込んでみれば何とかなり道は開けるものだとも思います。

独立しようかどうか悩んでいる方には、恐れることなくチャンスだと捉えて、是非1度チャレンジしてみることをおすすめします。

■著者紹介

福谷陽子

(略歴)

2001年司法試験合格
その後1年ほど海外旅行などして過ごす
2002年京都大学法学部卒業
2003年司法修習(第57期)
2004年弁護士登録
その後勤務弁護士として働く
2007年独立開業【陽花法律事務所(はるかほうりつじむしょ)】
2013年事務所を閉鎖
現在にいたる

(※本稿は2017年6月に加筆・修正しております)

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