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人気ドラマ「ダウントン・アビー」の舞台が現代日本だったら…クローリー家の危ない相続事情

NHKで放送中の海外ドラマ「ダウントン・アビー」が本国の英国では視聴率40%超え、米国ではなんと50%に乗せ、日本でも大人気となっています。この「ダウントン・アビー」では20世紀初頭のイギリス貴族の館を舞台に、様々な人間関係のドラマが繰り広げられています。

「ダウントン・アビー」の冒頭では、莫大な財産と爵位を有するロバート・クローリーの後継者が事故で亡くなったため相続の問題が発生しました。やはり相続についてはいつの時代も誰もが悩む問題と言っていいかもしれませんね。

 そこでもし、この「ダウントン・アビー」の舞台を日本に置き換えたらどうなるのでしょうか?

以下「ダウントン・アビー」の舞台設定を「20世紀初頭の英国」から「現代の日本」に置き換えて、ロバートの遺産相続にまつわる問題をシミュレーションしてみることにしましょう。

そもそも現代日本では「ダウントン・アビー」の後継者問題が発生しない

20世紀初頭当時のイギリスの相続制度は「限嗣相続」でした。これは、相続方法を限定する制度で、相続財産が分散しないよう、相続人を親族内の一人の男子に限定するものです。相続人対象者は男性だけで、女性は含みません。また、資産だけでなく、爵位などの地位も承継します。当時の貴族社会では、財産の所有者は「個人」ではなく「家」の代表者に過ぎませんでした。つまり、相続人は使用人を含む家族を養う責任と共に、財産と地位を受け継いだのです。そのため先述のようにドラマ中で後継者が亡くなると相続問題へと発展してしまいます。

一方、現代の日本の相続の考え方は「家」ではなく「個人」に着目します。また、女性も男性と同じ権利を認められています。更に家督制度はなく、地位や家族の保護責任は相続しません。そのためもしクローリー家の出来事が今の日本で生じた場合、後継者問題は発生せず、ロバートの妻や三姉妹それぞれが財産を相続します。

現代日本だと三姉妹や配偶者の間で「争続」になる可能性がある

 「ダウントン・アビー」はドラマ中盤まで、次女イーディスが長女メアリーの婚約者を誘惑したり、お互いの服のセンスをバカにしあったり、と姉妹の仲がよくありません。更に当時の貴族女性の主な関心は恋愛と流行で、法律や税務などについては人任せです。

 しかし、これらの姉妹が相続人となる現代日本ではどうなるでしょう?相続にはある程度の相続に関する知識が必要です。この姉妹₍メアリーとイーディス₎の状態では、財産の分割で感情的な口論になることは避けられません。つまりクローリー家は「争続」の事態に陥る可能性が高そうです。

クローリー家は相続する財産に不動産が多いため、生前の節税対策が必要

 

現代日本の相続でもっとも悩ましいのが納税の問題です。相続税の納付は原則現金であり、物納などはよほどの事情がない限りは認められません。相続財産が不動産ばかりで現金はほとんどないケースもあり、その場合の多くは、不動産を売って税金を工面することになります。もちろん居住用など一部の資産については事前に対策を練っていれば節税対策もとれますが、それをしなかったために急な相続で多額の相続税を課されるケースもあります。

クローリー家の財産の大半は屋敷や土地などの不動産です。日本の場合、被相続人の死亡の日から10か月以内に相続税を納めなくてはなりません。つまり相続人候補者がロバート生前時に相続の準備をしていないと、いざ相続が発生した時に慌てることになります。

 残念ながら「ダウントン・アビー」の公式HPにクローリー家の詳細な資産情報が掲載されていませんでしたので、ここでは相続する遺産総額を「1000億円」と仮定して各相続人の税額を計算してみます。本来相続は遺産分割協議などを行うものですが、ここでは法定相続分で分割したものとして相続税の総額を計算し、便宜上一万円未満を切り捨てて計算します。

(1)相続税を計算する対象となる遺産総額

遺産総額…1000億円

基礎控除額…3000万円+600万円×4人※=5400万円

課税遺産総額=遺産総額-基礎控除額=1000億円-5400万円=999億4600万円

※妻コーラと三姉妹₍メアリー、イーディス、シビル₎の4人です。

現在の日本での相続順位は、「被相続人の直系卑属(子や孫など)→直系尊属(父母・祖父母など) →兄弟姉妹とその子供」となっています。そのためロバートの母バイオレットや妹は相続人にはなりませんし、親族の配偶者も相続の対象外です。そのためコーラは相続人になりますが、三姉妹の夫たちは相続人になりません。

(2)法定相続分で按分

妻コーラ   999億4600万円×1/2=499億7300万円

長女メアリー  999億4600万円×1/6≒166億5766万円

次女イーディス 999億4600万円×1/6≒166億5766万円

三女シビル   999億4600万円×1/6≒166億5766万円

(3)相続税額の計算

妻コーラ    499億7300万円×55%-7,200万円=274億1315万円

長女メアリー  166億5766万円×55%-7,200万円≒90億8971万円

次女イーディス 166億5766万円×55%-7,200万円≒90億8971万円

三女シビル   166億5766万円×55%-7,200万円≒90億8971万円

もしロバート死亡時(相続開始時)、クローリー家に100億円しか現金がなかったらどうでしょう?一般的に考えて、10か月以内に納税するのは難しそうです。また妻コーラや三姉妹は相続税の納付のために資産を「現金化」する必要性に直面するかもしれません。もちろんロバート生前時に相続人同士が話し合って相続対策を行っていれば、節税も可能かもしれませんが…。

 

いかがでしたか?舞台背景が20世紀初頭の英国から現代の日本に変わっただけで、相続問題の内容もだいぶ変わりますね。これらを念頭に置きつつ、「ダウントン・アビー」を観ていくと、これまでと違った楽しみ方や新たな関心が生まれるかもしれません。


 

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士。

税理士鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち、会計事務所に転職する。妊娠・出産・ 育児をしながら、税理士試験の受験勉強を続け、2009年に合格。2012年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫と共に、外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。また、2014年から、国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。

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