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独立1年目社労士、新規顧客は0…|【開業奮闘記】

士業有資格者なら誰でも一度は考える「独立開業」。しかしここ10年の士業資格取得に対する過剰なほどの人気は、結果として競合の増加を促し、叩き売りのような価格競争まで見られるようになってきました。

 「独立開業」に憧れながら、その一方でなかなかはじめの一歩を踏み出せない方、またはじめの一歩を踏み出したものの夢と現実のギャップに悩まれている方にとって、士業として「独立開業」を果たし事業を継続されている方の声は気になるところではないでしょうか?

 そこで前回ご好評いただいた「新米社労士がぶつかった現実の壁」に引き続き、特定社会保険労務士 モリ事務所代表 森克巳氏に独立開業後の現実についてお話いただきました。

₍以下、森氏₎


 

 統計がないので私の主観となりますが、開業届を提出した社労士が3年後に残っている割合は2~3割位だと思います。他の7~8割の方は廃業したり、士業事務所に就職したりと独立開業を辞められている訳です。もちろん、続けるだけが良いことではありませんが、今回の記事を書くにあたり、まがりなりにも20数年間社労士を続けてこられたのはなぜか?を自分なりに振り返ってみました。大成功を収めた訳でもない地味な話ではありますが(笑)、独立開業して悩んでいる方の小さなヒントになれば幸いです。

独立開業社労士1年目…顧客は3件

私は大学を卒業後、製薬会社に就職しMRとして勤務しました。大学は文系だったため理系の知識は全くなく、新人研修で3ヶ月間、薬学をみっちりと仕込まれました。とてもとても大変なMR時代でしたが、営業職という意味では、その後の貴重な経験になったと思っています。

そして肝心の社労士としてのスタートですが、製薬会社を退職後、平成5年に社労士試験に合格し、すぐに開業届を提出しました。最初の1年目の顧客数はというと…恥ずかしながら3件でした。しかも2件はMR時代の知り合いの医院、残り1件は税理士の先生からの紹介で、実質自分で獲得した新規顧客は0でした。

MR時代は新規の病院でも名刺を出してドクターにアポを求めると、100%会うことができたものです。それが、受付で社労士の名刺を出しても(当たり前ですが)誰も会ってもらえません。見事なまでに門前払いを食らいました。

そんなある日、ある企業の知り合いの方が「社労士として働かないか?」と声をかけてくださいました。企業内で社労士実務を経験できることは非常に魅力的です…というのは若干建前で、新規営業に辟易し始めていた私は渡りに船とばかりにその企業に就職をしました。一旦独立開業の道からは外れますが、この企業で実務を経験できた事は大きな収穫でした。

(この話は前回の「一発合格した新米社労士が現実の壁にぶつかった話」で書かせていただいたので、ご興味ある方はお読みください)

そして、その会社を約3年で退職。いよいよ改めて2回目の開業時代を迎えたのですが…またしても「顧客が獲得できない」という壁にぶち当たります。営業経験があっても、実務経験があっても、すぐに顧客が取れるほど甘くはありませんでした。

予備校講師業と開業社労士のハングリー精神

周囲に社労士の知り合いもいなかった私は、合格直後は社労士学校に通い、事務手続きのイロハと一緒に営業方法も学びました。2回目の開業でもそれを実践していきましたが、ほとんど成果は上がりません。

1年ほど経っても思うように顧客が増えず、段々と焦ってきた私に、ある日家人が求人広告を差し出しました。それは某大手資格予備校の社労士非常勤講師の募集でした。「うーん」と思いつつも、定期的な収入はやはり魅力的ですし、最新の法令がイヤでも頭に入る、そんな思いで週2回の授業を受け持つ講師業をスタートし、社労士との二足のわらじの生活が始まりました。

講師の仕事を始めた2、3年は授業に必死で、正直言いますと新規開拓の余力はありませんでした。やっと講師業にも慣れてきた頃、第3回目の開業のつもりで、営業に本腰を入れ始めました。講師の仕事を一生続けられるわけではないですし、開業したからには、社労士業でちゃんと食べていきたかったからです。

しかし、今回もなかなか成果は上がりません。社労士の会合で他の先生に顧客が伸びない話を愚痴ると、「それは森さんが講師の仕事である程度稼いでしまっていて、ハングリー精神がないからじゃないの?」と指摘されました。私は当時「そんな事ない!」と自分では思っていましたが、後で振り返るとその通りだったと思います。

そんなある日、某社労士事務所のメールマガジンの巻末に「第○期 社労士開業学校 生徒募集」の文字を見つけました。それを見た私は直感的に「これだ!」と思いました。その開業学校は、「ウチは営業方法しか教えません」という一貫した内容でした。ここで学んだ半年間が、大きなターニングポイントとなりました。

士業営業に近道なし

社労士とは言え、営業の基本はテレアポです。まず、電話をしたら極力社長さんを呼んでもらいます。そして「御社は社労士の先生とは契約されていますでしょうか?」と伺います。「していません」と言われたら、その会社は見込み顧客です。業務案内のFAXを1枚送らせてもらいたいとお願いし、事務所だよりを送ったり、法改正など大きな出来事があると、電話をしたりとフォローをします。

とはいえ、そんな見込み客を見つける確率は100社電話をして、良くて2、3社です。残りの98社からは迷惑そうな声を出され、社長をお願いしますと言えば「どういったご用件でしょうか?」と胡散臭がられ、ヘタをすれば、ガチャンと切られ、とヘコむ思いを沢山しました。しかし最終的には「断られて当たり前なんだ」という開き直りも出てきます。

 さらにこの開業学校は週1回の授業でしたが、翌週の授業までにテレアポのノルマを決められ、発表しなくてはなりませんでした。先生もなかなか厳しく、当時必死でテレアポをしたことを覚えています。そのおかげで顧客倍増…と言いたいところですが、またまた世の中そんなに甘いものではありませんでした。しかし、この頃から不思議な事が起こり始めます。

交流会、そしてWEB集客の見えない波

テレアポが「攻め」の営業だとしたら、「守り」の営業として他の士業の先生との交流と、ホームページ立ち上げを行っていました。地元の士業交流会に積極的に参加し、税理士や、司法書士、行政書士の先生と名刺交換をするのです。その後は事務所だよりを毎月送っていました。すると、忘れかけた頃に士業の先生から「森先生に紹介したい会社があるんですが」という連絡がポツポツと入るようになったのです。これは本当に不思議なもので、テレアポなどで真剣に新規開拓を進めていると、別のチャンネルから顧客獲得があるのです。

ホームページも同様でした。当時はホームページソフトを使い、自分でチープなページを作っていました。それでも1、2件の問い合わせはあったのですが、この学校で今後のホームページの重要性を説かれ、奮発してホームページの全面リニューアルを行いました。

すると、テレアポの時期と重なったこともあってなぜか問い合わせが増え、次々に契約に結び付いていったのです。

こうして時間はかかりましたが、良いお客様に恵まれ、社労士事務所として何とか遜色のない顧客数と実績を上げることができました。今現在、講師業は辞めており(ちょっと寂しかったですが)、お蔭さまで忙しい日々を送っています。

前置きで開業社労士が3年目に残る割合は2~3割、と書きましたが、残れば良いというものではありません。自分に合わないと思ったら、見切りをつけるタイミングはとても大切です。実際、社労士を辞めて他の道で成功した方も多くいらっしゃると思います。

私は結果的に他の仕事を兼務しながら、亀のような歩みで進んできましたので、あまり皆さんの参考になる話ではなかったかもしれません。もっと短期間で業績を伸ばしている先生方は沢山いらっしゃいます。ただ、MR時代、就職時代、予備校の講師時代など様々な経験が見えない所で血肉となって、今の私を支えてくれているのだと思います。ちょっと遠回りはしたかもしれませんが、振り返るとどれも私にとっては必要で大切な経験でした。

社労士に限らず、独立開業の壁にぶち当たっていると感じている皆さん。皆さんはすでに様々なリスクや不安を乗り越えて、そのスタートラインに立ったはずです。冷静に足元を確かめつつも、自分の本当にやりたいことを貫いてみてください。

私が皆さんに何か伝えられるとしたら、

Where there’s a will, there’s a way. —-意志あるところに道は拓ける、ということです。

 

■著者:モリ事務所 代表 森 克巳

■HP:http://mori-roumu.com/web/

1987年法政大学法学部法律学科卒業。製薬会社MR、医療法人人事担当管理職を経て、平成11年に開業。「労働問題」の専門家として、地域の中小企業の労務問題と真摯に向き合い、数々の困難な問題を解決。豊富な経験に裏打ちされた適切なアドバイスには定評がある。

 

森社労士奮闘記シリーズ

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